製麦
1. 二条大麦
最初はモルティング、すなわち製麦だ。その第一歩は、使う大麦の品種を決めることから始まる。
使うのは二条大麦。穂先が二つに分かれているのでこういう名前が付いた。ちなみに六つに分かれているのは六条大麦。
二条大麦といっても、実に多くの品種がある。 各蒸留所では品種の特性や価格を考慮して、数種類の品種をミックスして用いている。
スコットランドは緯度が高い。冬は夜が長く寒さも厳しいが、夏場は日照時間がとても長い。実はこれが大麦の成長には非常に好都合で、高濃度のジアスターゼ(澱粉分解酵素)が形成される。
スコットランドで採れる二条大麦はまさに、スコッチウイスキーのためには最高の状態にある。
* なぜジアスターゼの濃度が高いとウイスキー造りに良いのかは、「フロア・モルティング」の項を参照ください。
2. ウェット & ドライ
モルティングの最初の工程は、大麦をスティープス(大麦浸漬槽)に入れ、水を加える。というより浸す。そして、大麦がたっぷりと水を吸い込んだ頃合いを見て、今度は水を抜いて空気にさらす。これを数回繰り返す。水に浸し(ウェット)、空気にさらす(ドライ)。だから、ウェット & ドライという。
この作業に2日から3日。麦の成長開始を促す作業である。
なんか、小学校の理科の時間にやった、大豆の水栽培を思い出すなぁ。
3. フロア・モルティング
浸麦を終え、たっぷりと水分を吸収した大麦を、今度は発芽させるために、フロア・モルティングを行う。
これは、モルトマンと呼ばれる熟練の職人がコンクリートの上に浸麦後の大麦を広げ、スキップという木製のシャベルで敷き詰めた大麦を混ぜる。というより切り返す。こうすることにより、すべての大麦に空気が均等に触れるようになる。これを、約10日間、毎日続ける。
こうして大麦の発芽に最適な環境を作ってやることによって、大麦はいよいよ発芽を開始する。
発芽が始まると、麦の内部にアミラーゼと呼ばれる糖化酵素が生まれる。このアミラーゼの中でも、特にジアスターゼと呼ばれる酵素が大麦に含まれる澱粉(スターチ)を加水分解し、麦芽糖とブドウ糖に変える働きをする。アミラーゼの形成を最大限にするための作業がフロア・モルティングである、とご理解頂きたい。この工程如何で、後工程の糖化(マッシング)の成否が決まる、といってもいいくらい、大事なところだ。
だが、フロア・モルティングは、非常に手間がかかる、熟練の職人でないと務まらない、など問題も多いため、現在、これを行っている蒸留所は数えるほどしかない。ほとんどの蒸留所では、モルトスターと呼ばれる専門の麦芽製造業者に依託している。モルトスターでは、フロア・モルティングの代わりにドラム式モルティングという、機械を用いた方法で低コストかつ大量生産を実現している。もちろん、各蒸留所ごとにモルティングのための決まったレシピがあり、モルトスターはそれに忠実に従って麦芽を製造する。それぞれの蒸留所の味は、しっかりと守られているのだ。
4. 乾燥
発芽が進み、ジアスターゼの生成がピークに達するころ(目安として、芽が殻皮内部の5分の3程度になったころ)、今度は発芽をストップさせる。これ以上発芽が進むと、逆にジアスターゼが芽の成長に使われてしまい、次工程の 「糖化」 が不十分になってしまうからだ。
発芽を止めるには、麦から水分を取り除いてやればよい。すなわち、乾燥である。
スコットランドでは、麦芽の乾燥を行うために、麦芽はキルンと呼ばれる乾燥室に運び込まれ、スノコ状の鉄板に広げられ、下からピートを燃やして燻煙でいぶす。この作業が、スコッチウイスキーにあの独特のスモーキーフレーバーを与えるのに大きな役割を果たしている。
煙でいぶすことで麦芽が乾燥し(発芽がストップし)、何とも言えない煙臭さ(スモーキーフレーバー)がたっぷりと染みこむ。まる一日以上(20~30時間)いぶせば、そりゃ煙臭くもなりますって。
5. 粉砕
キルンを出た(乾燥した)麦芽は、脱根機(モルトスクリーン)にかけられ、余分な根が取り除かれる。ここまでの作業で、いわゆる 「ピーテッド・モルト」 すなわちピート香のついた麦芽が完成する。これをミル(粉砕機)にかけて粉状にする。これをグリストという。ちなみに、モルトスターはこのグリストを各蒸留所に卸している。
さあ、次はいよいよ仕込みだ。

